粗忽長屋で蒟蒻問答

無駄な方便、無用の用、脳味噌を棚卸する、そんな雑草咄しと落語と書見

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

【落語】あたま山/桜ん坊

落語の数ある噺のなかでも、もっともばかばかしく、きわめつけに奇々怪界で、シュールさの極北とでもいえる噺がこの演目となるのではないでしょうか。 江戸寄席で「あたま山」、上方落語では「桜ん坊」と呼ばれる演題で、このタイトルもじつに意味深です。 …

五分の魂

毎年想う。 ついにこの季節がやってきたと。 蚊、である。 ウチは5階建てマンションの5階なのに、なぜか蚊がいる。 蚊がやってくる。 蚊が飛来する。 蚊が漂っている。 それくらい、蚊とのたたかいに追われる。 いろいろな対策をとるも、それでも、夜、寝…

落とし穴・下

(つづき) 二歩目。 秘密基地が林立し、秘密裡に潰しあうというフェーズが進化して、一時的に、単純な破壊活動だけが先行するようになる。 つまりは、自分たちの秘密基地をつくる、ということはしなくなり、ただ潰すことだけを目的に徘徊する輩が出始めたの…

落とし穴・上

むかし、秘密基地遊びというのが流行った。 現在、アラフォー、アラフィフあたりの年代の方々に該当する思い出ぶかい遊び、ということになるのだろうか。 それ以前の年配の方々、あるいは現在の子どもたちも、こういった遊びをやっていた、あるいはしている…

恍ける

先日、歯科の待合室で、眼鏡をかけながら、メガネ、メガネと、自分の眼鏡を探している年配の人を見かけた。 まあ、よくある話である。 今日は、こういう話を思いつくままに挙げてみようと思う。 ちなみに、たった今も、似たような事例が発生した。 どういう…

しどろもどろ

落語のなかに「崇徳院」という噺がある。 いわゆる恋煩いをあつかった噺なのだが、落語のなかで色恋沙汰や艶話をあつかったものは、どちらかというと遊女、女郎相手が多いなかで、この噺では、さる大家の若旦那が清水の茶屋で偶然出会ったお嬢さんにひと目惚…

寝ざま

睡眠の加減というものがむずかしい。 仕事が夜遅くに終わることも多く、帰宅して、深夜に寝床につくということもしばしばである。 翌日が、ではなく当日になってしまうが、休みの日となっている場合など、夕方まで寝てしまうときがある。 ところが、そういう…

茶受け

コンビニで昼飯に、おにぎり2個とブラックコーヒーを購入したら、一緒にランチをしようとした人に驚かれたことがある。 その人が言うには、おにぎりに合わせて買うのなら緑茶などの和風のお茶、ブラックコーヒーに合わせて買うのならサンドイッチなどのパン…

超進化論的形相

先日、カニを馳走になる機会があった。 店で少々、席が空くまで待たされているあいだに、店に備え付けられていた生け簀を眺めていた。 いろいろな魚がひらひらと身をひるがえすなかに、お目当てのカニもいた。 そのカニをまじまじと見る。 そして、思う。 こ…

大目玉

平日の休み、昼下がりの午後、家で無聊をかこっていたら、遠くのほうから、子どもたちがキャッキャとさわぐ音が聞こえきた。 下校途中なのだろう。 遠くのほうから聞こえてくる子どもたちの笑い声というのも、わるくない風情である。 そんなことをぼんやり思…

牛の尻に跳び蹴り

友人が地方に移住して、田舎暮らしをしたいと言っている。 こちらも以前に田舎暮らしというか、晴耕雨読の生活にある種の憧憬のようなものを抱いたクチなので、そういえばだいぶ前に、この友人にそんな話をしたこともあったっけな、ということで、話につきあ…

慰撫

チプカシが好きである。 ご存じない方のためにちょっと解説すると、「チープ・カシオ」の略で、つまりはカシオ製の安い腕時計のことである。 わりと前の話になるが、とある人が(イギリスの方だったと思う)、SNSでこのチプカシのことを投稿して話題にな…

献立

カミさんから、誕生日プレゼントに宝くじをもらった。 ……宝くじ、か。 ところで、宝くじに当選して幸福になる人には共通点があると聞いたことがある。 いずれの人も、当選前に、3億円なら3億円分、1億円なら1億円分の当選金の使いみちを事細かに、詳細に…

熱唱

さきほど、帰宅中に、ひとけのない夜道をひとり歩いていたときの出来事である。 向かいから、自転車に乗った高校生が、イヤホンをして、熱唱しながら近づいてきた。 こちらに気づいていないのだろう、歌声に力がこもっている。 が、すれちがいざま、ようやく…

最速の行末

年齢とともに、時間が体感として早く感じられるようになるといわれる。 同じ1時間でも若い人ほど進みが遅いと感じられ、歳をとるほどに時間の進みが「あっという間」に感じられるというやつである。 たしかにそうなのかもしれないと最近、とみに感じる。 仕…

剽軽もの

この前、田舎道の赤信号で停止中に、クルマのフロントガラスに、なにか茶色く細長い物体が飛来してきて、ペトっと付着した。 なにかと思って見てみると、カマキリだった。 一瞬、ムム、となる。 カマキリに対しては、複雑な心情がある。 子どもの頃、苦手な…

長は短を兼ねない

ワイヤレス・イヤホンとの相性が悪い。 なくすし、こわす。 使い終わるたびにポケットにそのままつっこむので、どこにいったのかわからなくなり、落としているのか、まぁ、失くす。 使い終わるたびにポケットにそのままつっこむので、そのまま洗濯してしまっ…

一人民族大移動

まじまじとながめると、なんとはなしにおかしみをそそる言い回し、というのがある。 たとえば回転寿司。 だいぶ以前に、たしか、なにかのギャグ漫画か、もしくはだれかのコントで見たと記憶しているのだが、回転寿司屋の暖簾をくぐって中に入ってみると、皿…

バッティングセンター[後編]

(つづき) 結局、対抗策といっても、所詮は酔っぱらいの浅知恵である。 出した結論は、三杯呑む前に打つ(博打ではない)であった。 バッティングセンターに立ち寄ってから店に来る、というだけの、ほんとうに始末に追えない悪あがきである。 だって、酔っ…

バッティングセンター[中編]

(つづき) その後。 しばらくのあいだ、常連客のあいだで、行きつけの呑み屋とバッティングセンターを往復するという日々が続いたわけだが、どんなことにも「調子に乗るヤツ」というのはいるもので、入れ込んで、マイバットを購入、なんてのも流行りはじめ…

バッティングセンター[前編]

落語のなかに「首提灯」という噺がある。 酔っぱらいが夜道ですれ違った侍に悪態をついたことから辻斬りに遭い、あまりにも鮮やかに首を斬られたものだから、それに気づかずに、てんやわんやとする話だ。 もとい、最初のうちは斬られたことすら気づかずに、…

日常茶飯事

食いものの衝撃を感じなくなって久しい。 過去を振り返るに、えもいわれぬ美味さにその飯し屋へと通い詰める、ということをやった経験が幾度かある。 が、そういったことも絶えて久しいように感じられて、これはなかなかどうして、人生を損しているのではな…

搦手

先日、定期健診があった。 まいどのことだが、医者から運動しなさいと言われる。 常套句だとわかっちゃいるが、言われると、そうなんだよなぁ、運動しなきゃなぁ、とため息をもらし、次の日に忘れている。 当初は、何度か、試みたことはあった。 ランニング…

自然の摂理

先日、田舎のおふくろから電話がかかってきた。 滅多にないことなので、仕事中だが、なにごとかと思って電話に出てみると、まとまりのない、たわいのない話をしはじめる始末である。 こちらは仕事中である。 母親とは用件を話せない生き物なのか。 解せない…

頭から粉

そうじをしていて思うのだが、よくもまぁ、こんなにも髪の毛やちぢれ毛が落ちているものだと感じ入る。 神秘としか思えないのが、タンスの上などから陰毛を発見することだ。 ありえないところに紛れ込んでいる。 どうやってここに? なぜここに? と毎回思う…

奇癖

当代の現役噺家で贔屓にしているのが、柳家喬太郎である。 マクラや新作の語り口の軽妙さもいいし、古典もきっちり聴かせる力量に唸らされる。 現在ではあまりネタに上がらなくなった古典演目を高座にかけるということもやっている人で、そのなかに「擬宝珠…

蛇足

強い雨がふっている日に思うことがある。 クルマを運転する機会がわりと多いものだから、駐車してクルマに出入りしようとするたびに、気になることがあるのだ。 ドアの内側が濡れることである。 これが、気になってしょうがない。 車種にもよるのかもしれな…

隔世の感

ある年齢を超えたあたりから、「不快を減らす」方向に舵を切ることが大切なのではないかと思うようになった。 若いころは、「快を増やす」方向へと自然とむかう。ほおっておいても、むかう。 だがそれも、どこかで潮目がかわるときがやってくる。 快を増やす…