粗忽長屋で蒟蒻問答

無駄な方便、無用の用、脳味噌を棚卸する、そんな雑草咄しと落語と書見

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

重複

重複を「じゅうふく」と云う人たちがいる。 間違いではない。 いや、正しいのだ。 だが一方で、それは「ちょうふく」でしょ、と腹のなかで口ずさむ自分がいる。 思い出がある。 小学生の頃だったと思う。 漢字テストで満点だと踏んでいた答案に、返されたと…

異彩

数日前に『ドラクエ10オフライン』のヴァージョン2が配信されたので、目下、プレイ中である。 このなかで、自分の琴線を揺さぶる出色のキャラクターがいる。 主人公や勇者姫の仲間で、おそらく歴代の登場キャラのなかでもかなり異質な部類に入るのではな…

ちょうどよいテロテロさ

からだを締めつける服が嫌いである。 よって、タイトな服は一枚も所持していない。 もっとも、メタボ化後、タイト化してしまった服はある。 背広はそれで買い替えするという、身も蓋もない始末が多い。 私服のほうは、それゆえ、つねにワンサイズ上を買うこ…

屹立

家の近所に鷺が飛んできた。 写真中央の白い点がそうである。 屋根の向こうには用水路があるだけの場所である。 なぜ、ここに? そう、思った。 調べてみると、集団で飛来する地域では害獣認定の憂き目にあっているところもあるそうである。 実害にあわれて…

粒が立つ

夫婦共働きなので、晩飯を一人で食することがある。 ありがたいことに、可能なかぎり自炊することをモットーとしているカミさんのおかげで、たいがいは晩飯の作り置きをしていてくれて、夜、冷蔵庫からそれをゴソゴソと引っぱり出してきて、いただいている。…

レーザーが追いかけてくる恐怖

呑み屋でしか顔を合わせない常連客のなかに、ゲーム好きの呑み友だちがいる。 そいつがしつこくすすめてくるのと、ひょんなことから、昨年、任天堂Switchを購入することにした。 正直、ゲームが下手である。 こちとら、小中学生のときのファミコン、スーパー…

場末の呑み屋の四方山話・その5 「黄色い太陽」

昨年亡くなられた故・アントニオ猪木さんを偲んで。 「ほら、俺、プロレス好きだろ」 「ああ」 「それでさ、猪木さんが亡くなったときに思い出したことがあってさ」 「なに?」 「いやさ、だいぶ前だからウル覚えだけど、むかし、なんかの週刊誌でさ、猪木さ…

場末の呑み屋の四方山話・その4 「目的地」

(註:今回は話者が3人となっております。車の運転をしない人にはピンとこないかもしれません) 「この前さ、クルマ運転してて、すごいことに気づいてしまった」 「なによ?」 「人生のことはすべてクルマで喩えることができる」 「ふぅん、たとえば?」 「…

場末の呑み屋の四方山話・その3 「陸側」

「おつかれ」 「おう、先にやらせてもらってるよ」 「おう。マスター、俺は、今日はビールじゃなくて、お茶割りにしようかな」 「2軒目?」 「うん、2軒目。ところでさ、聞いたんだけど、お前のところの後輩、怪我したんだって?」 「あー、あれな。そう、…

場末の呑み屋の四方山話・その2 「キセキ」

「マスかいてる?」 「なんだよ、いきなり。下ネタか」 「いや、わりとまじめな話」 「どうした?」 「いやさ、自分のところのガキの顔見ててさ、つくづく思ったんだよね、すごい確率で生まれてきたんだなって」 「どういうこと?」 「精子って、一回で何匹…

場末の呑み屋の四方山話・その1 「ビルの谷間」

「歳とったよなぁ……」 「まぁ、そうだな。どういうときに老いを感じる?」 「いやさ、このまえ結構な雨がふっただろ。それでうちの工場の敷地のなかに、そこそこの大きさの水たまりができてたわけよ」 「うん、それで」 「それでさ、これならイケる、飛び越…

【読書】健康優良不良少年たちが闊歩するドープな近未来的世界 ──『AKIRA』(大友克洋)

コミックス刊行ならび映画公開から40年ほどを経てもなおリアルタイム感を損なわない強度を誇る、いまなお日本のマンガ、アニメーション作品の頂点に位置しているといっても過言ではないマスターピースである。圧倒的な画力、クールな音像性、そして最高に…

【読書】あなたの「運命の楽器」はどれか? ──『オーケストラ楽器別人間学』(茂木大輔)

音楽に関心のある人なら、どなたでもおそらく気になるであろう話題。すでに楽器をやっている人も、やっていない人も、数ある楽器のなかで自分と相性のいい楽器はどれなのか? ──興味をそそるお題である。この自分にとっての「運命の楽器」とはどれか、につい…

【読書】漫然と考えていることを何気なくあぶり出してくれることばたち ──『知の百家言』(中村雄二郎)

モワッと感じているツカミどころのない考えが、あらわれては消え、流れ去ってはぶり返す、といったことが誰しもあるかもしれない。 こういったとらえどころのない想念の曇り空を晴らしてくれるのが"気づき"ということになるのだろうが、気づきは、だれかの…

【読書】この世界にたった一人で存在すると感じられる瞬間の、そんな「しん」とした静謐さを生起させる美しい文章 ──『旅をする木』(星野道夫)

都会の雑踏や繁華街の喧騒から外れて裏路地などに入ったときに、ふいに現れたひと気のない濃密な静寂に呑まれて、この世界に自分ただ一人だけが存在している、といった感覚に打たれた経験はないだろうか。 もしも、そんな静謐で、ある意味で"神聖な"感覚を…

【読書】当たり前だと思うことに慈しみある「なぜ?」を向ける、元祖つぶやきの書 ──『柿の種』(寺田寅彦)

個人的に問答無用の推しの一冊で、当ブログのコンセプトの一端ともなった本である。良本中の良本、"本たるべき本"とでもいえようか、あまり本に馴染みのない人でもすっと入り込める短文集で、本の虫や活字中毒者の方々には一服の清涼剤のようなものとして…

【落語】居残り左平次

落語の数ある噺のなかにもヒーローものとでもいえる噺がいくつかあります。この噺はそんなヒーローもののなかでも出色したでき栄えの傑作となります。 落語の世界で語られるヒーロー(あるいはアンチ・ヒーロー)とは、どのような人物なのか? そして演題に…

目が合った

5月に入ったものの、肌寒く感じる昨日今日の天気にふと思い出す。 昨年の2月に新潟を旅行したのだが、その日は地元の方々も認めるほどの豪雪であるにもかかわらず、そんな天候のなかで上越市にある水族博物館うみがたりを観光した。 海沿いにある施設なの…

猿一匹

自宅のベランダで一服しつつ、思い出した。 昨年の7月、団地のなかを猿が歩いているのを目撃。 数日後、近所をクルマで走っていたら、またぞろ、ばったり遭遇したのだが、その後、どこへ行ったのだろうか。 近所の子どもなどが遊んでいるところで、その野性…

身を寄せあう

雨上がり、近所のコンビニで見かけた風景。窓枠に収まって、三匹。なにを想う。