粗忽長屋で蒟蒻問答

無駄な方便、無用の用、脳味噌を棚卸する、そんな雑草咄しと落語と書見

異彩

数日前に『ドラクエ10オフライン』のヴァージョン2が配信されたので、目下、プレイ中である。

 

このなかで、自分の琴線を揺さぶる出色のキャラクターがいる。

主人公や勇者姫の仲間で、おそらく歴代の登場キャラのなかでもかなり異質な部類に入るのではないだろうか。

いわゆる仲間内のお笑い担当枠という役まわりで造形されたのだろうが、客観的にみて、おそろしく浮いてるように感じる。

たとえば、プレイヤーが一所懸命にレベルを上げると、こう言い放つ。

 

「ワシは役にたちませんよ!」

「強くなるなんて、屈辱です!」

 

……いい。

 

くすぐるものがある。

 

ラクタ収集に心血注ぎ、役に立たないものをこよなく愛する。逆に、役に立つものをとことん嫌う徹底ぷり。

昨今、際どいニュアンスを含むが、“ゴミ屋敷” に住んで、城主を名乗る。

瓦礫と化した遺跡に捨てられていたとされる遺児を、赤ん坊は役立たずだからという理由で拾い育てる甲斐甲斐しさもいい。

重要アイテムをゴミだと思って拾ってきたにもかかわらず、他人からじつは有用なものだと指摘されるとあっさりと他人に投げわたす潔さ。

ラクタが命より大事だと公言してはばからず、実際にガラクタと自分の命を天秤にかける場面では、迷うことなくガラクタを選ぶ男気。

他人から見て価値のないモノにこそ、その真価を見出そうとする、その生き様。

 

かぶいている。

傾奇者すぎる。

見事である。

 

勘違いの徹底ぷりもよい。

主人公のことをあくまで自分の助手だと見なし、ポンコツ2号と呼び続ける。

まわりが世界を救う旅をしているなかで、自分だけはガラクタを追い求める。

 

もはや、世界を救うストーリーなどどうでもよい。

この男がどこへ向かうのか。

そればかりが気になる始末である。

 

ドラクエの世界観の中では、異彩を放ちすぎるきらいがしないでもないがゆえに、少々、心配ではある。

おもしろキャラとしてファン受けを狙ったのかもしれないが、はっきり言って、逸脱の度合いが臨界を超え気味なゆえに、正統派のドラクエ好きからは不興をかいかねない危うさすらある。

 

だが、そこがいい。

 

キャラ設定がピーキー過ぎて、もはや本編ストーリーを超越したところで、独自の存在感をもち始めつつあるのではないかとさえ感じる。

 

彼の名はダストン。

 

現在、パーティーのスタメンとして営為、奮闘中である。