粗忽長屋で蒟蒻問答

無駄な方便、無用の用、脳味噌を棚卸する、そんな雑草咄しと落語と書見

場末の呑み屋の四方山話・その2 「キセキ」

「マスかいてる?」

「なんだよ、いきなり。下ネタか」

「いや、わりとまじめな話」

「どうした?」

「いやさ、自分のところのガキの顔見ててさ、つくづく思ったんだよね、すごい確率で生まれてきたんだなって」

「どういうこと?」

「精子って、一回で何匹いるんだっけ?」

「1億?、2億?」

「だろ。それをさ、若い頃からサルのようにやり続けてきたとすると、子供が生まれるときには、そりゃぁ、もう、天文学的な数字になるわけだ。すさまじい確率だろ」

 

「奇跡だな」

「だな」

「……」

「……」

「それを思うと、人間、かんたんに死ねないよな」

「だな」

「ははははは」

「ははははは」

 

(註・行き付けの呑み屋でなされた実際にあった会話です。多少は整えました。前後は猥談だったので割愛。話していて、在野の賢人をみる思いだった)