「マスかいてる?」
「なんだよ、いきなり。下ネタか」
「いや、わりとまじめな話」
「どうした?」
「いやさ、自分のところのガキの顔見ててさ、つくづく思ったんだよね、すごい確率で生まれてきたんだなって」
「どういうこと?」
「精子って、一回で何匹いるんだっけ?」
「1億?、2億?」
「だろ。それをさ、若い頃からサルのようにやり続けてきたとすると、子供が生まれるときには、そりゃぁ、もう、天文学的な数字になるわけだ。すさまじい確率だろ」
「奇跡だな」
「だな」
「……」
「……」
「それを思うと、人間、かんたんに死ねないよな」
「だな」
「ははははは」
「ははははは」
(註・行き付けの呑み屋でなされた実際にあった会話です。多少は整えました。前後は猥談だったので割愛。話していて、在野の賢人をみる思いだった)