粗忽長屋で蒟蒻問答

無駄な方便、無用の用、脳味噌を棚卸する、そんな雑草咄しと落語と書見

煽がれる

昨日、困ったことに"気づいた"ので、ここに筆をとることにする。

ウチは、カミさんとの共通の趣味というのが銭湯に行くことで、月に2、3回、近隣の施設におもむいている。
ときには遠出して、温泉につかりに行くこともあるが、ふだんはまあ、市内と隣市、隣町にある数箇所の浴場を気分で巡回している。

そこで昨日、少々、困るというか、煮え切らない出来事があった。

昨今、銭湯ブーム、サウナブームというのがあったが、いまも継続しているのだろうか。いや、継続しているのだろう。
というのも、なかでもよく通うスーパー銭湯でサウナブームが続いており、なにかにつけてイベントをやっているのだ。
ブームで利用客が多いのはしょうがない。保養施設だし、そこは大衆の憩いの場なのだから、多少の混雑は甘んじて受け入れよう。
だが、困るのはイベントのほうである。

そのイベントというのが、サウ活している客向けに、サウ活応援団なる、店側が用意したむくつけき男たち5〜6名が、なにやら密室のなかでワッショイと掛け声をかけているのだ。
おそらく時間制限を設けて、我慢比べとまではいかないまでも、サウ活客どもをサウナに閉じ込めて、長逗留させるイベントなのだろう。

ちなみに、自分はサウナが好きではない。

広い浴槽に脚を伸ばして湯船につかるのを良しとする性分なので、サウナには入らない。

よって、実際にどんなイベントをやっているのかは知らないのだが、サウナのほうから聞こえてくるワッショイというお祭り騒ぎから、そんな当て推量をしている。
風呂につかりながら、なんだかワチャワチャやっとるな、と横目で見ているのだが、まあ、正直、うるせえな、と思っている。

 

しかも、さらに困るのが、湯船からあがって、ほとぼりを冷まそうとベンチに座っているときである。

全裸で夜風にあたる至福の時間だ。
だがそこに、サウナから出てきた客とともに、サウ活応援団がやってくるのである。

 

サウナから出てきた客は、全身から湯気を立ち登らせつつ、冷水を浴びるか、水風呂につかるかした後、周辺のベンチに次々と座っていくわけだが、それをサウ活応援団が追いかけて、バスタオルを広げて、あおぐ、ということをやりはじめる。

しかも、どういうわけだか、関係のない自分のようなただベンチに座っているだけの客にも、一緒になって煽いでくるのだ。

 

目の前でサウ活応援団の男どもが、汗を吹き出し、目を血走らせて、バスタオルをバサバサとはためかせて、こちらを煽いでくる。

内心、いらないんだが、と思いながらも、なし崩し的にイベント客と間違われて、なぜか、煽がれる羽目になっている。
向こうはTシャツ、短パン、ねじりハチマキ姿なのだが、こちらは全裸である。

全裸だと、なぜだか、ことわれない。
すでになさけない姿をさらしているわけで、さらになさけないことに、ことわれない、という忸怩たる思いが胸に去来する。

かんべんしてくれよ、と思いながら、こっちの銭湯に来たのは失敗だったなと毎回後悔するのだ。

 

冒頭で"気づいた"といったのは、どういう偶然なのか、この銭湯に来ようと思った日にサウ活イベントが開催されているからだ。

ウチは夫婦共働きで、かつ土日固定休の職種というわけではなく、平日にカミさんと休みがかぶった日に銭湯に出かけている。

なのに、どういう確率なのか、この銭湯に来るとイベント日にバッティングするのだ。

どんだけイベントやってんの? と思って、開催日一覧を眺めるも、そこまでの頻度ではない。

にもかかわらず当たる、のである。

風呂から上がって、帰りがけにカミさんと話すと、どうやら女湯のほうではやっていないらしい。
なんの因果か、と不承不承にため息をつくばかりである。

 

このスーパー銭湯、じつは家からいちばん近くて、わりと通いやすい立地にあるのだが、そういうこともあって、昨日も考え無しに出かけてしまった、という顛末である。

次回こそは別の銭湯に行こうと思いながらも、惰性で同じことをくり返しそうで、まいど自分にあきれて、ため息をつくわけだが、こういうため息もリラックスのうちにはいるのだろうかと、ちょっとばかし諦念した気分になった次第である。